【読書記録】私の好きな孤独 / 長田弘
そんなに人とつながっていたいか。そんなに誰かと自分を比較したいか。
別に一人で良いじゃないか。別に孤独で良いじゃないか。
孤独だからこそ、見えるものもあるのだよ。
著者紹介
作家、詩人
概要
著者が「孤独」の中で感じる楽しみやかけがえのない日常について綴ったエッセイ
感想
以前読んだ『深呼吸の必要』は詩集だったが、今回はエッセイ集。タイトルの通り「孤独」をテーマにしている。
一般に「孤独」と聞くと何か良くないもの、ネガティブな印象を抱くがそうではない。著者は孤独の中にこそ楽しみがあると考えているようで、日常生活の中にある些細な喜びやかけがえのない時間について書かれている。日常生活を題材に書いている文章が多いため親しみやすいし、何よりも文章自体が読みやすい。
内容は三部構成になっており、明確な分類ないのたが大まかに以下のように分かれている。
第一部:クラシック、古典について
第二部:日常について
第三部:過去について
第一部はおそらくクラシック音楽などに造詣があると楽しめる。私は皆無なので正直よく分からなかった。なので申し訳ないが飛ばしてしまった。
第二部は日常生活を題材にしているので、読んでいて最も親しみやすかった。多少時代は異なるものの、風景がそこまで大きく変わっている訳ではないので特に違和感なく読むことができた。
第三部も面白いが、多少古典などへの言及があるので、たまに意味が分からないこともあった。
著者のエッセイの魅力は、何よりも日常風景を独特の視点で切り取る完成だ。特に第二部に収録される『窓』や『曲がり角』、『駅で』などは、普段私たちが当たり前に認知して特に何も考えないものを独特の視点から語っている。それを読むと、「あぁ、確かにそうかもしれない」と新鮮な気づきを得られるのが何よりも楽しい。
こうした独特の視点は、タイトルの通り著者が「孤独」を愛し「孤独」と共に生きてきた中で培われたものなのではないかと思う。一人でいると、良くも悪くも時間を潰す必要が出てくる。現代であればスマホで簡単に時間を潰せるが、著者の時代はそんなものはない。目の前の風景や人物などをじっと観察し、頭の中で色々な思考を巡らせた結果、本書に表れるような素敵な感性が養われたのだろう。
本書を読むと、日常生活の中にある些細な気づきや喜びを大切にしたくなる。人とつながったり遊んだり、意識を外に向けることももちろん大切だが、一人で静かにゆっくりと孤独な時間を過ごすのも、同じくらい大切なのだろうと思えた。
ピックアップ
孤独というのは、一人であることではない。じぶんでじぶんを楽しませることができない。それを孤独というのだ。
関連書籍